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SPECIAL

originalstyle SAN FRANCISCO滞在記

2011/02/14 UP

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Text:originalstyle / 山口幸士

【originalstyleプロフィール】
1982年 神奈川県川崎市生まれ。
洋画家であった祖父と、スケートボードや絵本からの影響は大きく、クラフト感にこだわった作品を精力的に発表している。
これまでにスケートブランド「TERRAFIRMA」「UNIFUL」でのデッキデザインや「METROPIA」へのグラフィック提供、「CHALLENGER」の内装壁画、また「PUSH CONNECTION」でメイングラフィックを手がけながら最近ではTokyo No.1 Soul Setのベスト盤「BEST SET」でのジャケットイラストレーション等も制作している。現在、スケートボードの魅力に迫るべく、スケートスポットを描く日々が続いている。

■アーティストページはこちら

そしてまず出発前に僕は何個か目標を立てていた。これは1ヶ月間という限られたSFでの時間を有意義に過ごすためだ。
 1:SFのスケートライフを体感してくる。
 2:スケートスポットを最低4カ所描いてくる。
 3:ギャラリーに自分を売り込んで展示のアポをとってくる。
 4:自分の作品を活かしたスケート関係の仕事をとってくる。
と、まぁこんな感じ。 出発前には売り込みで渡す用のポートフォリオを15冊程作り、出会った人やスケーターに渡す為に作品を載せたジン(手作り作品集)を30冊作っていった。英語をほとんど喋れない僕にはジンを渡すのはとても良いコミュニケーション手段となった。

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今回サンフランシスコでの宿は日本人の奥さんと黒人の旦那さんのゲストハウスだった。
そこでは家の一部屋を貸してくれてトイレ、シャワー、キッチンは共同だ。宿に着いて一息入れた後、まずはSFという街に慣れようと思いスケートとカメラと地図を持って宿の近くをブラブラしながら、オーシャンビーチの方へと行ってみた。サンフランシスコの11月は雨期と言われていたので雨が心配だったが、ラッキーなことに、僕が滞在していた1ヶ月間で雨は数日しか降らなかった。
サンフランシスコの空は見事に青く、気温は温かく (昼間は暑い)、海を見ながら「あ~SFに来たんだ~」という清々しい気持ちになった。

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サンフランシスコの夜道を歩いていてハッとしたのは星が沢山見えたということ。住宅街には電灯も少なくかなり静かなので野生のスカンクまで見ることができた。サンフランシスコは沢山の自然と街とがうまく共存している素敵な街なのだ。
サンフランシスコへ着いた翌日から、僕は作品制作のために早速スケートスポットを探しに出かけた。
ということで「まずは地元の情報!」と思い、ハイト&アシュベリーにあるスケートショップのFTCへ。

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FTCのスタッフに自己紹介がてらポートフォリオとジンを渡して、スケートスポットの正確な場所を聞いた。
FTCのショップがあるハイト&アシュベリーはヒッピー発祥の地と言われているだけあって路上にはギターを持った若者が小銭を稼いでいたり、鮮やかな色の壁画があったり、バックパッカーが多く見られた。
それから僕は慣れない街に迷いながらもミュニバスを乗り継ぎなんとか最初のスケートスポット「3rd&army」へ辿り着いた。

街の外れにあるこのスポットはSF初心者にはとてもわかりにくい場所で「本当にこんな所にスケートスポットがあんのかよ~」というところにある。スケートビデオで見ているスポットはほんの一部に過ぎないので初めてのスポットに行く道程は本当ワクワクする。まさに「お~ビデオで見たことある景色だ~」という感じ。

平日の真っ昼間だったので3rd&armyにはスケーターの姿はちらほらという程度。僕はローカルスケーターに軽く挨拶をして、スケボーで全体を回りながらどんな風に描こうかと構図を決めて早速スケッチし始めた。
描き始めてしばらくすると覗きにくるスケーターが。僕は片言の英語でスケートスポットを描いている絵描きだという自己紹介をしてジンを渡した。3rd&armyにはすごくゆるい空気が流れていて、みんな自分のペースで楽しそうに滑っている。僕も絵を描くのが疲れてくると軽く滑ってまた描くという感じで時間を過ごした。
青空の下、目を閉じてスケートデッキを弾く乾いた音を聞いているのが気持ちよかった。

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お腹が空いてくると近くに来ている移動販売車のブリトー屋で買って食べた。ブリトーはかなりのボリュームだったけど、青空の下で食べるブリトーとコーラが何ともアメリカらしくて最高に美味しかった。

3rd&armyには4日ほど通って1枚を描き上げた。今までの作品は僕がその場で感じた、あるいは思いついた言葉を絵の上に描いていたのだが、今回はそのスポットに落ちているゴミを拾ってコラージュしてみることにした。その方が見る側がそこから好きにメッセージなんかを汲み取ってより多くの人に見てもらう事が出来るのではないか?と思ったから。
実際に落ちているものを探してみると、これがまたおもしろい! レシートだったり大事な手紙だったりメモだったり買い物袋だったり…。そんなものをコラージュしながら僕は作品を作った。

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翌日は一通りスケートスポットの場所を把握しようと思いバスとスケボーでサンフランシスコのダウンタウンを徘徊した。街は坂のアップダウンが激しいので何か乗り物がないととても不便だ。そういったこともあってスケートボードが交通手段として当たり前に乗られているのかなと思った。それにしても、雨の中おじさんがスケボーに乗っていたのには驚いた。

一通りスケートスポットを回った後に描き始めたのはハバハイドアウト。

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スケボーのし過ぎで階段のレッジは丸くなりスケート止めが付けられていた。金融街の中の公園にあるそのスポットは、メッセンジャーやサラリーマンの一服場所として使われているようだ。木やオフィスビルに囲まれたそこは少しひんやりとして、危険な雰囲気が漂っていたので僕は描き始めるにも少しビクビクしていた。
何日か通って作品も完成に近づいてきた頃、BMXに乗った2人組と危険な雰囲気のおばさんが僕の隣に来て一服し始めた。BMXの2人組が声をかけてきたので、僕はいつもの通りジンを渡して絵の話しをした。その後BMXの2人組はジンのお礼を言って去り、おばさんと2人きりになってしまった。僕は緊張しながら絵を描いていると、彼女は煙を燻らせながら絵を覗き込んで「これはあなたが全部描いたの?素晴らしい!」と言ってくれた。
内心ビクビクしていたけれど、おばさんからの意外な言葉がすごく嬉しかった。自分の気持ちを声に出して言えることっていうのはすごく素敵なことだと思う。

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出発前に掲げた目標の中に「ギャラリーに売り込んで展示のアポをとってくる」というのがあった。これは僕の好きなアーティストやスケーターが育った街で、色々な人に自分の作品を見てもらいたいという思いがあるからだ。

そして自分に合いそうなギャラリーに何件も飛び込みでポートフォリオを渡して片言の英語で説明しながら原画を見せていたところ、とても良い反応を見せてくれたギャラリーがあった。

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運が良いことにそのギャラリーには日本人スタッフが働いていたので、オーナーとの会話を通訳してもらうことができた。
なんと「あなたの作品が気に入ったから再来年にこのギャラリーでショーをやらないか?」という話しだった。まだ正式には決まっていないのだが僕の作品を見せられるチャンスができたわけだ。
数日後にそのギャラリーで「コンテンポラリーダンスのショーがあるから来ないか?」と誘われたので行ってみることに。その日は夕方から土砂降りだったにもかかわらず、小さな会場には子供からおじいさんまでもが来ていた。小学生ぐらいの子供達は騒ぎもせずに真剣な眼差しでダンスを見ていた。ダンスが終わって皆で雑談している姿を見て、こうやって子供達が大人に交ざってアートを感じられる環境って素敵だなと思った。

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それからハバハイドアウトを描き終えた僕は、次にチャイナバンクへと向かった。
ここは名前の通りチャイナタウンにあるスケートスポットだ。

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周りの公園では沢山のおじいさん、おばあさんが毎日毎日飽きもせずにトランプをやっている。そんなのんびりとした環境と漢字の看板が、どこか僕を懐かしい気持ちにさせた。このスポットでも落ちているものを拾っていたのだが、ベンチの裏に1枚のトランプが落ちていた。きっとおじいさん達のトランプが風で飛ばされたのだろう。そんな風にその時、その場所でたまたま拾ったものから物語が見えてくるのがおもしろい。

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ここはウォーレンバーグというスケートスポット。近々取り壊されるという噂を聞いていたのでどうしても描きたかったスポットだ。
高校の敷地内にあるスポットなので、学校が休みの土曜日に行ってみることにした。このステア(階段)を飛ぶなんて本当にありえない。スケートビデオでは足元を中心に撮影しているのでスケートスポットの全体像やスケールがなかなか伝わりづらいのだが、実際に行ってみると周りの環境やスケールに驚かされることが多い。
取り壊される前にこのスポットを描けたのは本当に良かった。

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日曜にはバスで1時間ほどのところでフレアマーケット(青空市場)をやっているとの情報をゲットしたので朝早くから行ってみることに。
そこには古いミッキーマウスの人形やらガラクタやらアンティークやら古着があり、若い子も沢山来ていた。
街にもリサイクルショップが多く、若い子がそこをうまく利用してお金をかけずにファッションを楽しんでいる姿がとてもお洒落だというのは、SFに来て感じたことの一つだった。

その日の午後にはエンバーカーデロの近くにあるスケートスポット、通称アイランドへ。
ここでもスケーターにジンを渡していたところ、「スケートスポットを描いているやつか?」と聞かれたので驚いていると、声を掛けてきた彼らは3rd&armyで会ったスケーターに僕の話を聞いていたようだった。
異国で自分の存在を知ってもらえたことがとても嬉しかった。その後僕は彼らと一緒に滑らせてもらったのだが、誰も違和感なく自分のペースで滑っていて、同じ場所でただスケートを楽しんでいるだけという感覚がとても心地良かった。

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彼らは夜はライブラリーというスポットで滑っていると教えてもらったので行ってみることに。そこは名前の通り図書館の前にあるスポットだ。
ビールを飲みながらだらだら楽しそうに喋っているやつもいるし、スケートゲームしているやつもいるし、がっつり練習しているやつもいるし、そこにあるのは日本とあまり変わらないスケーターの日常的な光景だった。

この日の帰り道、バス停までプッシュしていると、何とバスの後ろに掴まってスケートしているやつが!
まさにBack To The Futureのような光景!興奮しながらカメラを取り出していると「お前も来い!」と誘ってくれたのだが、冷静に考えてこれはかなり危険行為だ!と思い、プッシュで追いかけながらひたすらシャッターをきっていた。
すると彼は「運転手に見つかるだろ!」というような事を言いながらバスに掴まったまま去っていったのだった。
ストリートでは面白い出来事が起こるものだと実感した瞬間であった。

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僕のことを気に入ってくれたギャラリーのオーナーは、サンクスギビング(アメリカの感謝祭)のホームパーティーに僕を誘ってくれた。教えてもらった住所に着くと、彼の奥さんやお姉さんが忙しそうに料理の支度をしてくれていた。

部屋を見て回ると、壁には僕の好きなアーティストの作品がたくさん飾られていた。僕は興奮しながら写真を撮っていると、「2階にまだあるよ」と案内してくれたのでついていくと、そこにもBarry McGeeやThomas Campbellなど僕の好きなアーティストの作品がたくさん飾られていた。みんな彼にゆかりのあるアーティストのようで、作品一つ一つを丁寧に説明してくれた。
その日のパーティには、そのギャラリーで展示中だったt.w.fiveという2人組みの女性アーティストや若手ペインターも招待されていたので作品について話しをした。彼女達はカラーテープを使って大きな作品を制作しているのだが、なぜペイントではなくてカラーテープを使うのか尋ねたところ、「ん~、楽しいから(笑)」と一言。

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パーティで出された料理は、ものすごく豪華で味付けもばっちりで最高な食事で、素晴らしい作品に囲まれながら、美味しい料理と人の温かさを感じた最高なひとときだった。

そう、SFで見つけた面白そうなイベントの中でも、sketch tuesdayというイベントは特に興味をそそられた。クラブイベントのような雰囲気の中、お酒を飲みながら誰もが絵を描くことを楽しむというイベントだ。
舞台にいるモデルさんを真剣に描いている人たちや、前もって選ばれた十数人の絵描きがその場で絵を描いて、完成したものを壁に張り出してお客さんは気に入った絵を手頃な値段で買うことができるというシステムだった。
絵描きと身近に話すこともできるし、テクニックを間近で見ることもできるし、一般のお客さんもお酒を飲みながら自由に絵を描くこともできて、老若男女問わず肩肘張らない面白いイベントだった。

そんな風に毎日を過ごしあっという間にSF滞在も残り1週間となった頃、僕はこの地に何かを残したいと思い、滞在中いろいろとお世話になったFTCの絵を描くことにした。それからショップの前に座り込んで5日ほどで絵を完成させた。FTCに来るスケーターや通行人など色々な人に声をかけられ、その場で生の声を聞けたのはとても貴重な体験だった。完成した作品は沢山のスケーターに見てもらいたいのでそのままFTCにプレゼントすることに。

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そう言えばSF滞在も残りわずかという頃、とても心に響く言葉があった。
僕が泊まっていた宿で、UCSFという看護では有名な大学に看護の研究をしに来ている方がいた。その方とビールを飲みながらよく話しをしたのだが、その人は「絵も看護も同じようなもので必要ない人には必要ないけれど、必要な人にはとても必要なものだと思うよ」と言っていた。当たり前のようではあるが、看護という人の命に関わる立場の人から言ってもらえた事でとても勇気付けられた。
SFに来てほとんど観光地にも行かずにスケートスポットを描いた1ヶ月間。出発前に掲げた「自分の作品を活かしたスケート関係の仕事をとってくる。」というのは達成できなかったが、作品を知ってもらうことはできた。そしてスケートボードと絵という世界共通言語をきっかけに人と繋がることが出来て思いもよらない出会いや体験をすることが出来た。
1ヶ月という短い期間ではあったが得るものはとても大きかった。また憧れのSFに行ってみたからこそ、逆に日本や東京の凄さもわかった。

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中学時代にやんちゃな先輩が近所でやっているのを見て憧れて始めたスケートボード。あれから十数年、毎日滑っているわけではないけれど僕なりにスケートボードと関わってきた。スケートボードから学んだことを活かしてこれからも表現していきたいと思う。自分が信じてやってきたことを胸張っていられるように。そうして僕が憧れたようにまた次の世代が憧れるようなシーンを作っていけたらと思う。

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